Run x Climb = Fun!!

登って走ってスピードハイク

垂壁のかなたへ/スティーブ・ハウス

 Training for the New Alpinismを書いたSteve Houseが彼のクライミング経験を綴った本。 

垂壁のかなたへ

垂壁のかなたへ

 

若いころの彼がスロヴェニアでクライミングに出会い、大学を卒業しながらも組織や誰かのために人生を費やすことは選ばず、生死や豊かさは約束されることのないクライミングに人生を捧げる決断をして、多くの山に登り、たくさんの人に出会い、結婚生活に失敗し、たくさんの挫折を経験しながらも多くの挑戦を成功させてきたことがよく伝わってくる。彼がクライミングスタイルで貫いているのがシンプルであること。最小限の装備で、しっかりとした準備で、コンディションを見極めて活動することで安全をさほど犠牲にする事無く(またはより多くの安全マージンを得て)困難なクライミングを成功させる...。

彼の業績でよく知られているのがアルパインスタイルでのナンガ・パルバットのルパール壁で、彼のライフワークとも言えるこの登攀が本の中でも大きなハイライトとして出てくる。他にもK2の単独無酸素やデナリのスロヴァクダイレクトなど、21世紀初頭のアルパインスタイルでのクライミングの新しい地平を切り開いた輝かしい功績は素晴らしく、彼がその成功経験とアプローチを後世に伝え、新たな地平を切り開く可能性を若い世代に託す意味でTraining for the New Alpinismを書いたのだなということがよくわかる。

忘れないでもらいたい - 物事がシンプルになればなっただけ、体験は豊かになる。

そのまんまPatagoniaだけど、この言葉はアウトドアアクティビティに限定することなく通用する原理だなーと思う。